北海道の写真家、浅井美紀さんが撮る花としずくの世界をご覧になったことはありますか?一眼レフカメラとマクロレンズを使って表現された小さな世界の神秘さ美しさは、見落としがちな自然の素晴らしさに気づかせてくれます。
しずくの中の花を撮ってみたい。
何度かご紹介させていただいたことがある写真集「幸せのしずく」。その作品の中でも強く惹かれたのが、“並んだしずくのひとつひとつの中に花が咲いている”写真でした。iPhoneカメラで「こんなの撮ってみたいな~」とずっと思っていたのです。
一眼レフカメラやデジカメも持ってはいるのですが、あえてそこを“iPhoneカメラで撮ってみる”というところに魅力を感じていたのです。
スマホ用マクロレンズもGETできたことですので、iPhoneカメラでどこまで「幸せのしずく」に近づけることができるのかトライです。心が躍ります。落ち着こう。
いよいよ、花の咲くしずくを撮ってみます。
自宅にあるものを利用して撮影してみたいと思います。iPhone 6 Plus にマクロレンズを挟んで付け、被写体となる造花、しずく作りの水と細いストロー、しずくが明るく映えるように背景にPPシートを用意しました。
ここからは紆余曲折のため、かなりの撮影枚数になったのですが、なんとか見るに耐えうる写真達でその奮闘っぷりをお伝えしたいと思います。
まず手始めにしずくを落として見てみました。遠すぎてピントが合わず。この位置ではしずくの中に花の気配すら感じられません。iPhoneカメラからの距離は10cmほど。
もう少し手前のしずくも同じく黄色いまま。
もっともっとしずくを近くに、そして花が映るようしずくの位置を高くし、さらにしずくの丸さがあれば、しずくの中に花が映ってくれるかもしれない。
しずくの直径を出すため、試しに水をはじく油分、バターをPPシートに塗ってみたのですが、これがさほど変わりなく。
そこで隣の空き地から雨をはじく葉っぱを持ってきました。これで丸さと高さが出せれば・・。
しずくを落としてぐっと近づいてみると、期待に反してしずくは「てろ~ん」と伸びてしまいました。が、花のピンクが映っています。その調子。
葉っぱの湾曲が逆に反っているものではこのような感じに。可愛いまるが乗りました。いい感じ。
しかしローアングルにすると葉っぱのくぼみで丸さが欠ける・・
花の位置を変え、花の大きさを変え
しなしなになっていく葉っぱを水に挿しながら角度を変えてみたり。
花の色しか映りません。花がなかなかしずくの中に収まってくれません。
もっと丸くて花を見下ろすようなしずくだと映りそう?
しずくの丸みを出したいのですが、3mm幅の葉っぱに乗せることができる水の量も限られます。くぼみもあり、水を多くすると葉っぱから流れ出てしまいました。
そこでひらめきました。ガムテープの粘着側に水を落とせば、まるっとしたしずくができるのではないかと。
テープを立てて置き、切り口をくるっと丸めてテープ本体にくっつけた上に、しずくを落としてみました。安定感があります。安心して落とせます。
ですがまたもや半球、丸くない。
・・・
「え?あ!花が映ってる!」
テープの直径は9cmほどですので、テーブルからしずくの高さも9cm。その高さから花を見下ろす感じとなったおかげでしょうか。いびつな形であろうとも嬉しい。
花をもっと近づけてみました。カメラ画面を見ながら移動させていたらテープに当たりしずくが流れてしまうこと数回。落ち着こう。
ティッシュの先で余分な水分を吸い取り、再度しずく投下。「かわいい・・」
斜めに構えてみたり、
しずくを向こう側にしたり
仲間も増やしてみました。
すごい!
iPhoneカメラとの距離は4cmほどです。丸めだったしずくですが、テープ本体の丸みでこれ以上iPhoneを近づけることができず、あれこれ模索しているうちにしずくが伸び気味に。でも綺麗。
このようなセッティングです。しずくをやや見下ろすようにiPhoneカメラを持っていき、花としずく、しずくとiPhoneをできる限り近づけて撮影しました。
(・・造花のチープさ!)
手ごたえを感じた次なるステップは、
“一輪花のように咲かせる”
そのためには、しずくとiPhoneカメラとの距離をもっと短くしないといけません。テープを切って粘着側が上にくるようにPPシートに貼ってみることにしました。テープ幅は5cm。
んー。花が半分切れてしまったり、花が花だとわかるように映らなかったり。
そうですよね、テープを切る前は4cm、切って5cm、しずくとの距離を短くするつもりが1cm遠くなっています。テープの丸みだけに囚われて算数ができていませんでした。
花の咲くしずく撮影、成功。
そこで切ったテープを今度は縦に細くカットし、このようにセッティング。しずくはΦ2~3mm。iPhoneカメラとしずくの距離は2cm以内です。
すると・・
花が映りましたー!
少しピンボケましたが。
しずくの中は反転して映りますので、セッティングの一番下にある大きな花が、しずくの中の花です。
左から2番めのしずくにピントを合わせました。
しみじみ素敵です。しみじみ嬉しいです。
渾身の1枚です。
多少のボヤボヤ感などなんのその。ビー玉のようなトンボ玉のような可愛さです。
「幸せのしずく」には及びませんが、iPhoneカメラ撮影でもなかなか素敵に撮れたのではないかと思います。次の課題は、しずくを、よりまん丸にする方法を編み出すこと?
花の咲くしずく、マクロ撮影のポイント。
- しずくとマクロレンズとの距離は1~3cm以内に。
- しずくと花の距離・角度・高さのバランス。
- しずくはできるだけ丸くまるく球状に。
- しずくの間隔を狭くすると並んだ感が出ます。
- AE/AFロックではなくタップAFでピント合わせ。
- HDR機能をオン設定。
- できれば手ぶれ防止に三脚やスタンドを使用。(私は手持ちでした)
ライトの照射が必要かなと思ったりしていたのですが、室内の蛍光灯で大丈夫でした。
マクロの手持ち撮影では、被写体とiPhoneカメラとの距離が変わりやすいため、AE/AFロックがピンボケの原因になってしまう場合がありますので、タップAFやオートフォーカス機能にお任せした方が安心です。
スマホ用マクロレンズについて
今回使用したマクロレンズは、Mpow Clip-On レンズ 3点セットのマクロレンズです。
そして先日、改良版が発売されました。マクロレンズの倍率が従来版の10Xから20Xへと更新されました。
1ヶ月前にお手頃価格になったので購入したのですが、改良版が発売されるためだったのですね。従来版でも十分楽しめています。良いお買い物でした。
うれし楽しい、しずくに花咲く撮影でした。
要領をつかむまでは、いろんな角度や高さ、しずくの大きさなどで試し撮りしたり、何度も何度もしずくが流れて拭き取ってを繰り返したりで、
ピンボケも含め撮影枚数が多く、手間も時間もかかっての奮闘。それをなるべくシンプルにお伝えできればと思ったのですが、
「楽しさを伝えることはできたのかな・・?」とにかく楽しかったのです。花がしずくの中に映った時には、それはもう、とても嬉しかったのです。
マクロレンズ撮影、楽しいです。
接写、大好きなのです。
P.S.「幸せのしずく」の撮影プロセスを美しい動画と音楽で撮影されています。
こちらは浅井美紀さんの紹介テキストが流れます。