
どのオイルを使う?再シーズニングして保管するまでの体験レポ
・・・見てしまった。キッチンキャビネットの片隅で、赤サビをまといひっそりと佇むスキレットのフタを。できる事なら、何も見なかったことにしてキッチンの大掃除を進めたいところだけど、そうも言ってはいられない。なぜなら、彼ら赤サビは放っておくとじわじわと歩みを進めテリトリーを広げてくる。確実に侵食してくることがわかっているからこそ悩ましい。
「開かずの箱から懐かしいものを見つけて掃除がちっとも進まない現象」を避けるべきか。それとも、赤サビに侵食される前に一刻も早くこのスキレットを救い出すべきか。もしかすると、大掃除を始めたのはこのスキレットがそっとSOSを発して、私のやる気スイッチを押してくれたのかも?…と思いたいところだけど、実際には「緊急アラーム」に近かったのかもしれない。
そんな自問自答をしているうちに、調理器具のお手入れもメンテナンスも大掃除の一環だと思えてきました。サビ落としも大掃除のうち。よーし、やりますか、サビ退治。
今回の記事では、スキレットとカバー(蓋)の特徴、錆びさせてしまった意外な原因、その錆を落とす方法、そして再シーズニングや保管方法について、私自身の経験を交えながらお届けしたいと思います。「こんなこともあるんだ。それでどう解決したの?」と一緒に体験を楽しむ気分で読み進めてもらえたら嬉しいです。
スキレットとは何か
最初に、スキレットについてあまり知らない方のために、基本的な情報や特性をお伝えします。スキレットとは鋳鉄製のフライパンのこと。鋳鉄(ちゅうてつ)とは鉄を溶かして型に流し込んで作られる素材で、厚みと重みがある分、安定感があり蓄熱性も高くて頑丈です。そんな鋳鉄で作られたスキレットには、こんな特長があります。
- 熱を均等に伝える:調理中の温度変化が少ないのでムラのない仕上がりになります。
- 熱を保つ:熱をよく蓄えてくれるので、弱火でのじっくり調理にも向いています。
丈夫で長持ちする:適切にお手入れすれば数十年どころか一生使えることも。 - 使い込むほどに味わいが増す:長く使うことで油膜ができ、焦げつかずにより深い風味を楽しめるようになります。
ちなみにですが、同じ鉄を材料にした「鉄フライパン」は、鉄を叩き伸ばしてプレス機で成形する鍛造製。鋳鉄製のスキレットよりも薄くて軽い分、熱伝導が早いので炒め物など高温で手早く仕上げたい調理に向いています。
スキレットと鉄フライパン、どちらも万能ですが、軽い操作性と短時間の高温調理をするなら鉄フライパン、じっくり煮込む料理やハンバーグなど旨みを閉じ込めてゆっくり焼き上げたい肉料理や焼き野菜などはスキレットがおすすめです。
スキレットカバーの魅力
わたしが愛用しているのは、LODGE(ロッジ)のキャストアイアンスキレットとカバーのセットです。スキレットカバーといえば、キャンプやアウトドアで焚き火にかけてワイルドに調理を楽しんだりする人からすると、あまり使う機会は少ないのかもしれませんね。ここで少しスキレットカバーの魅力を語らせてください。
このLODGEのスキレットカバーの内側には独特な突起が付いているのですが、これは食材の旨みを含んだ水分や油分を再び食材へと逃さず戻すためのものだそう。確かに、食材の旨みに鋳鉄特有の風味と香ばしさが加わるだけで、調味料を使わずただ焼いただけの野菜も味わい深く仕上がるのです。玉ねぎや人参などもそうですが、とくにキャベツとブロッコリーは少し焦げ目をつけると甘みと芳ばしさが増してとても美味しいです。
そして、このスキレットとカバーで焼き上げる目玉焼き。ふちは香ばしくカリカリで、白身がほんのり黄身を包む込むような、とろりとした目玉焼きが本当に美味しい。とにかく美味しい。もともと目玉焼きは、グラスカバー(ガラス製のふた)でフタをして作っていましたが、スキレットカバーではまったく違った焼き上がりと風味になるんですよね。
さらに、それだけで終わらないのがスキレットカバーの魅力。その鋳鉄の熱保持力と重みによってピッタリと密閉されたお肉や野菜の蒸し焼きは、よりいっそう深い味わいで仕上がります。もちろん、スキレットに残る旨味たっぷりの油も無駄にせず、チャーハンに使うのが私の鉄則です。炒飯好きにはたまらない美味しさです。
そんな美味しいスキレット料理を味わい続けるためにも、使った後のお手入れは毎回欠かさず、大切に使わせてもらってきたはずでした。
お手入れをしていたのに、なぜサビたのか
スキレットを使った後は、お湯とスクラブブラシで洗い、加熱でしっかりと乾かしてから、薄くオイルを塗るというお手入れを欠かしませんでした。
コゲがついた時には、
- スキレットでお湯を沸かしフツフツと沸騰させながら焦げつきを浮かせ、
- 残っているかもしれない見えない汚れを空焚きで炭化させてから、
- 再度お湯を沸かしてスクレーパーやバームたわしで擦り洗いをした後、
- 加熱でしっかりと乾かし、余熱でオイルをなじませています。
それなのに、なぜサビさせてしまったのか・・・赤サビが出てしまったスキレットカバーはこんな感じ。

ショックぅぅ・・・

・・・あれ?
それらのお手入れはスキレット本体の話で、錆びてしまった「カバーの表側」はというと、お湯を流しかけてさっと拭くだけだったかもしれません。スキレットの方にばかり意識が向いていてどうにも記憶が曖昧です。
それでも適度に使っていればまだ錆びることはなかったのかもしれませんが、数ヶ月前に購入した大きめの鉄フライパンに慣れようと、スキレットとカバーにはしばらくお休みしてもらっていたタイミングで錆びてしまったのです。
錆びたのは湿気のせいかなと一瞬思ったけれど、どうやらそれだけでもなさそう。調味料や塩分を含んだ油ハネが取れていなかったのかもしれない。スキレットカバーも軽くスクラブブラシで洗うべきだったとカバーに申し訳ない気持ちになりました。反省です。
幸いなことに、スキレットカバーと一緒に置いていたスキレット本体は、黒サビが赤サビの侵食からしっかりと守ってくれていたようで、良い感じに黒光の姿を保っていました。ひとまずスキレットの方は安心です。
黒サビと赤サビの違い
「黒サビって赤サビを防ぐの?」じつはそうなんです。鉄にできる黒い色の黒サビと赤茶色の赤サビ。同じサビでも金属に与える影響に違いがあるのです。
- 黒サビ(良いサビ):適切なお手入れやシーズニングにより形成される酸化被膜。この保護膜が金属を劣化させる赤サビから守ってくれます。
- 赤サビ(悪いサビ):一般的なサビで湿気や水分によって鉄が酸化して発生します。この赤サビは金属を侵食しやすく、進行すると素材をもろく劣化させます。茶色の茶サビはこの赤サビが変化したもので、濃い茶色のものだと内部への侵食がさらに進みやすくなるそうです。
スキレットが錆びる原因
鋳鉄製のスキレットは素材的にどうしてもサビやすいもの。とは言っても、私にとってスキレットカバーは大切な役割を果たしてくれる便利な調理器具なんですよね。できる限り長く使い続けたい。同じ失敗を繰り返さないためにも、錆びる要因について改めて考えてみました。
鉄が錆びる理由は意外とシンプルですが、スキレットや鉄フライパンの錆びの原因として見逃しがちなポイントがあるかもしれません。皆さんのスキレットは大丈夫ですか?一緒にチェックしてみましょう。
1. 調味料や塩分の残留
調理中にスキレットに付着する調味料や塩分、酸化成分などが取り切れていないと錆びの原因に。とくに料理を入れたまま放置すると確実に錆びやすくなるので、調理後はなるべく早く洗ってしっかり乾燥させます。
2. 湿気や水分
洗った後の乾燥が不十分だと、内部に残った水分が目に見えないところでサビを呼び寄せます。水分を拭き取ってから、火にかけてしっかりと水分を飛ばして乾燥させる作業が肝心なんですね。
3. オイル不足
洗って乾燥させた後のスキレットには、毎回少量の油分を塗ってあげることが大事。ここを省略すると保護層が徐々になくなり、湿気や調理時の塩分によって錆びやすくなります。油を軽く塗るだけで錆を防ぐ「鎧」になります。
5. 保管方法のミス
湿気がこもる場所にそのまま置いておく事も錆びを引き寄せる要因に。乾燥した新聞紙やクラフト紙、紙袋などに包んでから保管すると安心です。
こうして改めてチェックしてみると、錆びてしまったスキレットカバーはどの項目にも当てはまっているような気がしてきました。むむむ。
スキレットの錆びを落とす方法
スキレットや鉄フライパンが錆びてしまったとき、どう対応すればいいのか迷いますよね。わたしも焦げ付きを落とした経験はありますが、錆落としは今回が初めてのチャレンジです。どんなサビ落とし方法があるのか、調べたうちのいくつかを挙げてみるとこのような感じでした。
軽度なサビの場合
- スポンジで軽くこする:薄めた中性洗剤をスポンジに含めせて優しくこする。
- 重曹を使う:重曹と水を混ぜてペースト状にしたものをサビ部分に塗布、数分放置した後に拭き取る。または、水に重曹を溶かしてスキレットで沸騰させたあと、バームたわしなどでこする。
- 酢を使う:スキレットに水と酢を入れて沸騰させ、サビが溶け出してきたらバームたわしなどでこする。
軽いサビを落とした後は、しっかり洗い流して乾燥させ、薄くオイルを塗っておきます。
頑固なサビの場合
- サンドペーパーやスチールウールを使う:強めのサビでは、サンドペーパーや金属たわしでサビを削り落としてから軽くすすぎ、スキレットを高温で煙が上がるまで空焚きしてサビを炭化させます。その後、スキレットでお湯を沸騰させながらタワシで擦りながらサビや汚れを浮かせて落とします。
この場合、スキレットや鉄フライパンに傷がつく可能性があるので、強く擦りすぎず、丁寧に研磨します。
頑固なサビを落とした後は、しっかり洗い流して乾燥させ、オイルを薄く塗りオーブンやコンロで加熱してシーズニングします。
また、LODGE公式ブランドサイトでは、
ひどく焦げ付いた時やサビてしまった場合は、スクレーパーで刮げ落としてから水を入れて火にかけ、浮かせてください。
※馴染んだ油が抜けてしまう為、なるべく洗剤を使わずに洗いますが、焦げやニオイが気になる時は、重曹か洗剤でお手入れをし、シーズニングし直してください。
とアドバイスされています。
軽く擦るだけで落ちる程度のものならさっとサビを落としてからそのまますぐに調理を始められるそうですが、少し手間をかけてしっかり落とすと、やはり気持ちがいいものですよね。せっかくの機会なのでしっかりとサビが落ちるまで頑張ってみようと思います。
なのですが、わたしの場合は取っ手のついたカバーの表側。水を入れて沸騰させる事ができません。IHクッキングヒーターなので密接する底面がないためサビを炭化させようにもエラーになってしまい加熱させる事もできないのです。重曹も常備していませんし、洗剤や金たわしを使うのも初心者のわたしには気分的に少しハードルが高いので、できれば最後の手段にしたい。
実践!スキレットカバーの錆びを落としてシーズニングする
そこでわたしが選んだのは、いたってシンプルな方法。まず「バームたわし」で擦ってみよう!それで取れなかったら「錆びを落とす方法」を順番に試してみることにしました。
スキレットカバーにお湯を掛けながら硬めのバームたわしで奮戦すること10分間。

赤サビの進行はまだ軽かったようで、バームたわしでゴシゴシと擦っていくと、実践!と意気込んだわりにはそれほど苦戦する事なくサビを落とすことに成功。深く侵食していなくて本当に良かったです。
ただ、少し気になるのは所々に油膜のムラがあること。フチにはペリッと剥がれたような艶のない凹みも見られます。凸凹だと再シーズニングの時にオイルが均等に焼き付いてくれないかも?と思いつつ、それでも無事にサビは落とせたので、この状態から再シーズニングをスタートすることにしました。
スキレットカバーの輝きを取り戻す
スキレットのように調理時に油を馴染ませるというプロセスがないフタの表側。サビを落としたカバーに再び保護膜を作るため、高温で焼き上げるシーズニング作業を始めます。カバーを錆びから守り美しく保ってくれる再シーズニングはとても大切な作業です。
シーズニングの手順
- しっかり乾燥させてから、食用油を薄く均等に塗る
- 180℃で予熱したオーブンで40分間焼く
- 冷まして再び食用油を塗る
- 必要であれば、この工程をもう一度繰り返す
シーズニングに使うオイルはどれがいい?
LODGE社のキャストアイアン(鋳鉄)は、手元に届く前にすでにシーズニングされているので、お湯で軽く洗ってからすぐに使い始められるそうなのですが、念には念をということで、購入後に自宅でもシーズニングをしたのです。その時にはオリーブオイルを塗り込んで焼き上げたのだけど、そういえばシーズニングに使う食用油ってどれがいいんだろう?
鉄器や油を扱う企業やショップの方によると、「シーズニングには空気中で固まりやすく、スキレットの表面に油膜が作りやすい”乾性油”がおすすめ」とのことです。 油には乾性油、半乾性油、不乾性油の3種類があり、乾きやすい乾性油のほうがスキレットや鉄フライパンになじみやすく、油膜が取れにくいそう。
- 乾性油:アマニ油、えごま油、クルミ油、グレープシードオイルなど
- 半乾性油:菜種油、コーン油、ごま油、米油、大豆油など
- 不乾性油:オリーブオイル、ココナッツオイル、ラードなど
最初のシーズニングで使ったオリーブオイルって保護効果は優しめだったのですね。
いまキッチンにある食用油は、ごま油、米油、大豆油、オリーブオイルです。乾性油に分類されるグレープシードオイルはいつもマヨネーズ作りで使っているのですがあいにく切らしていました。次の候補となると半乾性油のごま油、米油、大豆油になりますが、今回は大きなボトルにたっぷりとある大豆油でシーズニングしてみようと思います。
錆びを落としてしっかり乾燥させたスキレットカバーに、大豆油をシリコンハケで薄く塗って、

180度に予熱したオーブンで40分間、焼きました。

大豆油(半乾性油)、驚きの効果です!
あまりの艶々しさに思わず目を見開いてしばらく凝視してしまいました。
オリーブオイル(不乾性油)でシーズニングした時のナチュラルな仕上がりとは違い、テカテカと光って見るからにしっかりとした油膜ができています。触れてみるとその保護膜の強さが伝わってきます。錆や湿気を寄せつけないような頼れるバリアが完成した感覚です。
気がかりだった油膜のムラですが、剥がれたような凸凹は少し滑らかになったとはいえ、やはり完全に均一にはなりませんでした。ですがそれほど気になるものではなく、とても綺麗に仕上がったと思います。心なしか活き活きとして見えませんか?

紙に包んで保管する
さて、無事に錆び落としとシーズニングを終えたスキレットカバーを大切に保管する準備ができました。まだしばらく使う予定がない場合の長期保管では、湿気から守るために新聞紙や包装紙、紙袋などで包んで保管すると良いとのこと。
しかし自宅には新聞紙や包装紙といった物がありません。スキレット&カバーを包めるような大きな紙って何かあったかな?と思っているところに、Amazonから荷物が届き、箱を開けるとそこには梱包材の大きなクラフト紙が!
おお紙よ。おお神よ。ありがたき幸せ来たり。

今回のメンテナンス体験を振り返ってみると、スキレットのお手入れだけでなくカバーにも気を配るべきだったなと改めて実感しました。ふだん使っている道具を丁寧に扱うことの大切さも学べましたし、お気に入りのキッチンアイテムがよみがえる喜びは想像以上でした。これからも大切に使っていきたいと思います。
次にスキレットを使う時は、なにを作ろうかな。やっぱりスキレットの定番料理、オリーブオイルにニンニクを効かせたアヒージョ?熱々のオイルにぷくぷく浮かぶ具材たちを思い浮かべると、もう口の中が幸せでいっぱいになる気がします。それとも、カバーを活かしてたっぷりの野菜を使ったキッシュにしようかな?スキレットから漂うキッシュの芳ばしい香りを想像するだけで、なんだかお腹がすいてきました。どちらにしても楽しみです。
みなさんは、よみがえったスキレットでどんな料理を楽しむのでしょう。おすすめのスキレット料理はなんですか?



