
忙しい予定に振り回されない。大切な時間と心の余裕を手に入れる実践ガイド
忙しさに飲み込まれそうな日々、「やることリスト」で自分を追い込んだ経験はありませんか?朝から晩まで予定を詰め込み、あれもこれもとタスクを増やしていくうちに、気がつけば息つく間もなく走り続けている。スケジュールをこなすことに必死で、自分の気持ちや体の疲れに気づかないまま進んでしまう。そして、ふっと疲れを感じてソファに沈み込み、そのまま朝を迎えることもあるかもしれません。
作業をスムーズに効率よく進めるための「ToDoリスト」であるはずなのに、そのリスト自体に振り回されている、「やることリスト」自体に追われている、なんてことはありませんか?「やるべきこと」や目の前のタスクをこなすことだけに集中していると、自分が本当に大切にしたいことや長期的な目標、自分自身と向き合う時間を見失うことがあります。もし思い当たるようなら、自分のペースを取り戻すために少し立ち止まる時間を作ることも大切かもしれません。
わたしも以前、デスクやPCデスクトップに貼り付けたカラフルなメモ片を前に、「これは何のためのリストなんだろう」と首をかしげてしまうことがよくありました。やることの山に押しつぶされそうになるたびに、なにか違う視点が必要だと感じます。その小さな違和感を抱えつつ過ごしていたある日、「やらないことリスト」というユニークな方法がふと心に引っかかりました。
「やらないことリスト」とは?
世の中には“やることリスト”が溢れていますが、逆に“しないこと”を明確にするリストを作ることは意外と見落とされがちかもしれません。この逆転の発想から生まれた「やらないことリスト」は、誰かの期待に応えようと知らず知らずのうちに無理をしていた私にとって、自分らしい毎日をつくる小さな味方になってくれました。
「やらないことリスト」とは、ToDoリストを逆にしたものではありません。頭の中で「これはやめたい」「本当はやりたくない」とぼんやり考えていたものを、白紙の上にひとつひとつ書き出す作業です。「やること」を増やすのではなく、「やらないこと」を明確にする。そこに自分の価値観や望みが素直に表れて、「やらなくちゃ」でいっぱいになっていた心に余白ができ、本当にしたいことが自然に浮かび上がってくるというものなのです。
今回の記事では、私自身の体験や気づきを交えつつ、この「やらないことリスト」の魅力や作り方、実践法などをお届けしたいと思います。
「やること」より「やらないこと」に目をむける理由
やることリストは確かに便利でわたしも活用しています。なのですが、それがどんどん膨らんでいくと「やらなければいけないこと」をするために時間を費やし、自分にとって大切なことをおざなりにしているような息苦しさを感じてしまうことがあります。「今日もこんなにこなせた!」と達成感に浸る日もありますが、翌日にはまた新しい用事と期限に追われ、終わりのないループに迷います。
そんな時、やらないことに注目してみると、少しずつ時間の流れが緩やかになり自分の軸が戻ってくるように感じました。たとえば、朝起きてSNSをなんとなく覗かない。飲み会の誘いに安易に返事をしない。何気なくコンビニで買い物をしない。など、どれも些細なルールなのですが、面白いことに、この「やらないことリスト」のおかげで、結果的に「やることリスト」をこなす時間や心の余裕が生まれ、他にやりたかった事をするエネルギーが湧いてきたりしました。この小さな工夫が、自分らしさを大切にしながら暮らしに自由と余白をもたらしてくれたのです。
「やらないことリスト」がもたらす3つの効果
気づかぬうちに日常は大小さまざまな「やること」に埋め尽くされています。日々のメール返信、突然の依頼、SNSでの投稿やコメント返し。それらが積み重なり、一日の終わりには「今日の自分はいったい何をしたかったんだろう?」と虚しくなる夜もあるでしょう。わたしも同じです。だからこその「やらないことリスト」です。
- 時間の余裕が生まれるーー必要のない選択肢やタスクを削れば、決断もスムーズになり、自分の本当の「やること」に集中できます。タスクに追われるのではなく、不要なことをあらかじめ手放すことで、本当に大事なもののための時間が生まれました。
- ストレスが軽くなるーー「これはしない」と決めておけば、余計な依頼や迷いから距離を置けます。「全部やらなきゃ」と自分を責めて落ち込む…そんな緊張感から少し距離を取れるようになります。「今日はこれをしない」と決めることで、心のスペースが広がって、深呼吸しやすくなりました。
- 集中力が高まるーーやらないことを選んだ分、優先順位を自然とクリアにしてくれエネルギーを大事なことだけに注げます。やるべきことの輪郭がはっきりしてきて、メリハリのある毎日が戻ってきます。何を優先しどこで休むか自然と見極める力もついてきました。
「やらないことリスト」がもたらすもの。それは、単なる時間の節約だけではありませんでした。不必要な決断の回数が減って、ストレスの元になる場面も少なくなり、その分、自分が本当に大切にしたいことや自分らしさが自然と見えてくるように感じました。無意識で請け負ってしまうタスクを減らせば、もっと穏やかな時間が生まれる。空いた時間で、自分の成長や幸福につながる行動が自然と優先できます。それが、「やらないことリスト」という新たな習慣を始めるきっかけとなり、今では私の日常に欠かせないものとなっています。
自分だけの「やらないことリスト」の作り方
それでは、具体的にどのようなことを「やらないことリスト」に書けばよいのか、リストを作るプロセスや作り方のちょっとしたコツなどを紹介していきたいと思います。
1. つまずきどころを洗い出す
具体的な方法ですが、まずは日常で「なんだか気が進まないのに仕方なくやっていること」を洗い出して見ることがスタート地点です。たとえば、なんとなく引き受けてしまった仕事、断るのは悪いかもとついOKしてしまう誘い、やる気が出ないのに習慣で繰り返している行動。それらを挙げてみます。
わたしの場合、誰かの誘いを断りきれず、結局自分の時間が圧迫されてしまうことが続いていました。そんな「毎回気が重い行動」や「なんとなく不満」「やりたくないと感じていること」にしっかり目を向けて、ひとつずつ挙げていくことで、リストの候補が見えてきます。
2. 価値観や目的を明確にする
つぎに、自分が大切だと思う価値観や目標を明確にし、それを基準に不要なもの「やらないこと」を言葉にします。「家族との夕飯の時間を大切にしたい」「無理な残業は避けたい」「健康を維持したい」など、自分の軸となる思いをはっきりさせ、それを基準に「やらないこと」を選びます。
たとえば、「家族と過ごす時間を大切にする」という価値観を持っているなら、「帰宅後はパソコンを開かない」「食後はなんとなくスマホを手にしない」というように、自分の軸に正直でいられるよう「やらないことリスト」を作っていきます。
3. 具体的な内容を書き出す
「やらないことリスト」には、曖昧な表現ではなく、できるだけ具体的に書きます。「毎週末のSNSスクロールをやめる」「寝る前に動画を見ない」などといった、自分がついやってしまいそうなことをリストアップするのが効果的です。行動を具体的にはっきりと書くことで、迷いやすい瞬間にも判断材料になり実行しやすくなります。
たとえば、食べ物への欲求が強く、「ダイエット中でもデザートやスナック菓子を食べてしまう」という場合は、「夜9時以降は冷蔵庫を開けない」「スナック菓子は買わない」などリストに書きます。
もし、「〜しない」という言葉に違和感があるなら、「外出先で誘惑に負けないように健康的なおやつを持参する」「仕事中でも家族からの電話にはできる限り出る」「駅ではエスカレーターではなく階段を利用する」というように「〜にする」という形で「やらないことリスト」に書いても大丈夫です。
4. 他人の目線は気にしない
時に周囲の人から「なんでそれしないの?」と不思議がられることも確かにあります。だけど、「私はこうしたい」「自分はこれを選んだから」と優しく受け止め自分に言い聞かせることで、少しずつ誰かからの期待と自分の心地よい距離感を保てるようになりました。
自分の心に正直でいることで、「やらないことリスト」の効果はしっかりと育っていることを感じられるようになると思います。
5. ほどよく柔軟にバランスを楽しむ
「やらないことリスト」は、まわりの反応に惑わされることなく自分らしさを大事にしたい。そんな思いに寄り添うリストで、制限リストでありません。完璧主義になりすぎず、時には例外もOKという柔軟さも残しておきたいところ。生活のリズムのなかで、バランスよく付き合うのがコツだと思います。
無理にすべての事を完璧にしようとするのではなく「完璧を目指さない」、自分の限界を認めて「無理をしない」とリストにあってもよいと思います。必ず守らなければいけないものでもなく自分が本当に大切だと思うことに集中するためのツールなので、その日の自分の状態や周りの環境に合わせて柔軟にゆるめるのも大事な選択だなと感じています。
「本当に必要なもの」を選ぶ目が育つ
「やらないことリスト」は、思えば心の棚卸し作業や整理整頓に近いような気がします。“何かを手放すことで、新しいスペースが生まれる”という静かで前向きな選択の積み重ね。私自身、この習慣によって「選びとる時間」に心地よさを感じる日が増えました。
はじめて取り組んだときは、リストの内容が少しネガティブかな?と感じるかもしれません。でも、「やらないこと」は決して消極的な選択ではないのです。「やらない」ことで、本当に「やりたいことに」エネルギーを注ぐことができる能動的でポジティブな選択。それがわたしの経験から感じた率直な実感です。
“本当に必要なものだけに集中したい”という思いからこのリストを始めました。毎日のちょっとした習慣づくりが、後々じんわりと大きな実りに変わっていく。それに気づけたことが何よりの収穫です。
「やらないこと」にも優しい目線を
過去のわたしを振り返ると、常に何かをしていなくてはと追い立てられていたように思います。「やらないこと」に後ろめたさや罪悪感のようなものを感じて心が落ち着かないこともよくありました。忙しい時ほど自分の気持ちは後回しにしがちで行動は空回りになりがち。
そんな時に「やらないことリスト」に出会えたことは、わたしにとって大きな転機でした。わたしの人生はわたしが選んだ「やらないこと」によって形作られています。「やらないこと」のひとつひとつは小さなものですが、自分の思いを「選びとる」ことができるようになり、時間も心にも余白ができ、落ち着いてタスクに取り組むことができるようになりました。
「やらないこと」は自由へのチケット
今では柔らかく生きたい私にとって、「やらないことリスト」は自分への優しい約束です。時には「自分の時間を大切にしたいけど、つい無駄にしちゃう自分」もいますし、「そうは言ってもここは頑張りどころ」という時にはタスクを詰め込んで奮起する時もあります。以前との大きな違いは、やることに追い立てられているストレスではなく、やりたいことに集中できている「心地よい負荷」になっていることです。
その時々の自分の思いを柔軟にすくい取りながら、これからも、小さな「やらない」を少しずつ加えながら毎日を大切にしていきたいと感じています。忙しい日々の中で心に余白を作るための「やらないことリスト」というツール、ぜひ皆さんも試してみてください。まずは小さな一歩から。今日「やらないこと」をひとつだけ決めてみましょう!
