
ナビゲーションの音声案内が聞こえない不安を解消、感音性難聴である私の体験談です
毎朝Apple Watchを手首につけることから、私の一日が始まります。多くの人にとって、それは時間の確認や通知の受信、アクティビティや健康状態を記録するためのツールかもしれませんね。でも私にとっては、それ以上に日常を安心して過ごすための心強いサポーター的な存在でもあるのです。
私は感音性難聴という聴覚障害があります。高音域や電子音がまったく聞こえないタイプで、人の声は聞こえても言葉の聞き取りが困難です。会話を気楽に楽しむなんて夢のような話。ナビの音声案内が聞き取れず、右に曲がるべきところを左に進んで道に迷うなんてことも日常茶飯事でした。
方向音痴でもある私が知らない場所へ向かうときは、スマートフォンの地図を何度も立ち止まって確認し、運転中は音声案内を聞き取ろうと緊張の連続。目的地に着く頃にはすっかり疲れ果ててしまいます。
そんな私の日々に、ささやかだけれど確かな革命をもたらしてくれたのがApple Watchでした。
もしかしたら、あなたも私と同じように聴覚に何らかの不安を抱えていたり、あるいは地図を見ていても迷ってしまう方向音痴だったりするでしょうか。
音に頼ることなく、またカーナビの案内を見逃したとしても、手首に伝わるトントンという静かで優しい振動が目的地まで案内してくれる。時にはうっかり忘れていた大切な約束の時間を教えてくれたり、大事な連絡の通知を知らせてくれる。触覚フィードバックが私の世界をどれほど広げてくれたか。
この記事では、感音性難聴の私がApple Watchの「触覚フィードバック」という機能に出会い、どのように日常が変わったのか、その実体験をお話ししたいと思います。
Apple Watchとの出会いは、iPhoneの通知音やバイブレーションに気づけなくて困っている様子を見た家族が、Series4をプレゼントしてくれたことから始まりました。当初はメールやメッセージの通知を手首に直接振動で知らせてくれるたびに、その便利さと快適さに感動していました。ところが、触覚フィードバックで道案内までしてくれることを知ったのは実はずいぶん後になってからなのです。
というのも、右左折の方向を振動の違いで教えてくれる触覚フィードバックは、iPhoneのAppleマップとApple Watchを連携させることで使える機能です。でもAppleマップがリリースされた当初、喜んで開いたものの不具合があり「Googleマップで十分」とそっと閉じて以来、使っていなかったのでした。
転機が訪れたのは、Apple CarPlayに対応した車を購入したとき。
Apple「マップ」の存在を思い出し、試しに「Hey Siri、○○に行きたい」とマップアプリを呼び出してみると、とても見やすくなっていて驚きました。そのまま目的地を設定して運転していると、曲がり角が近づくたび手首のApple Watchがトントンと振動することに気がつきました。
右折はリズミカルに「トトトト…」と連続した振動、左折は「トントン、トントン」と少し間隔を置いた振動。このパターンの違いはすぐに覚えられ、まるで誰かが隣で「ここを右だよ」と優しく腕を引いてくれるような不思議な安心感がありました。これまでのようにディスプレイのナビを何度も確認したり、音声案内に気を取られることなく、しっかり前を向いて周囲の安全と街の景色を楽しみながら、リラックスして目的地までドライブできたのです。
もちろん使っているとバッテリーの減りが少しだけ早くなるけれど、それ以上にこの「音に頼らないナビゲーション」が私の外出スタイルを大きく変えてくれた喜びの方が大きいものでした。
まず、知人や友人との待ち合わせで「約束の時間までにたどり着けるだろうか」と心配することがなくなり、会えることへの純粋な楽しみだけを感じられるようになりました。道に迷うかもしれないという不安がなくなったことで、知らない場所へ行くハードルがぐんと下がりました。これまでは緊張の連続で気疲れしてしまい寄り道する余裕などありませんでしたが、今では気になったカフェや雑貨ショップに立ち寄ってみたりと行動範囲が広がりました。おかげで新しい発見も増えました。ふらりと立ち寄った素敵なパン屋さんで思わぬ美味しさに出会えたのも、触覚フィードバックの安心感があったからこそです。
設定はとても簡単。徒歩や自転車、電車などの交通機関を利用するときもiPhoneのマップアプリで行き先を設定するだけ。あとはApple Watchが連携して振動で案内してくれます。車なら「Hey Siri、○○まで案内して」「近くに美味しいカレーショップはある?」と話しかけるとApple CarPlayでAppleマップが開き、ルート候補やショップ候補を表示してくれるので選択するだけです。
ちなみにですが、触覚フィードバック以外の機能ではリアルタイムの交通情報や制限速度も表示してくれますし、高速道路などの複雑に交差するジャンクションでは自動で3D表示に切り替わり「どの車線にいればいいか」を直感的に示してくれます。余裕をもって車線変更できるのは私にとって安心で安全な嬉しいポイントです。
触覚の設定はiPhoneのWatchアプリ、またはApple Watchの「設定」から「サウンドと触覚」→「触覚による通知」をオンで行えます。私は消音モードにして、触覚は「はっきり」を選択しています。音は鳴らずに振動が「デフォルト」よりもしっかりとわかりやすく伝えてくれるのです。
もし触覚フィードバックが作動しない場合は「設定」から「マップ」を選択して設定内容を確認してみてください。設定に問題がない場合はiPhoneとApple Watchの両方を再起動することで直ることもあります。
電子音などが聞こえない私はiPhoneもApple Watchも消音モードにしています。電子音が鳴っていても自分だけが聞こえず周りに迷惑をかけたことがあったので、最初にこれだけは忘れずに設定しています。音が鳴るものなのかわからない設定は、家族に「これ鳴ってる?」と確認してもらいながら設定しています。
少し話はそれますが、音量関連で笑える失敗談があります。以前Bluetoothイヤホンで音楽を聴いていると家族がチラチラとこちらを見るので「ん?」と尋ねると「イヤホンで聴かないの?」と言われたんです。そう、イヤホンで聴いているつもりでしたがBluetoothが繋がっておらず、Apple Watchから流れていました。ほかにも、どこからか大きな話し声のようなものが聞こえると思っていたら、何かの拍子に消音モードが解除されたiPhoneから広告動画が大音量で流れていたなんてことも。「なんの音?」と尋ねると笑いながら私の手元にあるiPhoneを指されました。それからはコントロールセンターでのこまめな消音チェックは欠かしません。
さて、触覚フィードバックに話を戻すことにしましょう。
Apple Watchの触覚フィードバックは、ナビゲーション以外でも日常に溶け込んで感音性難聴をサポートしてくれています。なかでもよく使っているのがタイマーやアラーム機能です。
家電製品のお知らせ音のほとんどは電子音。その電子音が聞こえないために困ることがよくあります。オーブンレンジが呼んでいてもわからない。冷蔵庫の扉がきちんと閉まっていなくてお知らせ音が鳴っていても気づけない。洗濯機の終了音が聞こえなくて洗濯物がシワシワに。電子体温計ではいつ計り終わったのかもわからず取り出したらエラーになったり。IHヒーターや浄水器のアラーム音が鳴り響く中で呑気に読み物をしていて帰宅した家族がびっくりしたりと、挙げればキリがないほどありますが、そんな中でもタイマー機能を活用して「できない」から「できる」に変えられることがあります。
洗濯機や体温計、オーブンレンジやホームベーカリーなどの完了は、ボタンを押したり取り出したりしないと音が鳴り止まないものもあるようなので、終了時間に合わせてタイマーをセット、触覚フィードバックでお知らせしてもらいます。手首に振動がきたらその場でスタンバイ、家電の小さなディスプレイを眺めながら完了の文字が表示されたら速やかに取り出しています。
タイマーさえ忘れずにセットしておけば、たとえ読書や調べものに集中していてもApple Watchが振動して知らせてくれるので、電子レンジを開けると温め直したコーヒーがすっかり冷めていた、なんていう「うっかり」もかなり減りました。出掛ける時間や予定がある時間にアラームをセットしておけば、スケジュール通りに進められるようになりました。
時計や天気、リマインダーなどと同じくらい頻繁に使うタイマーアプリなので、Apple Watchのマイ文字盤に組み込んでおくと使いたい時にサッと表示でき、とても便利でおすすめです。
こうして振り返ってみるだけでも、私にとってApple Watchの触覚フィードバックは「便利な機能」を超えた存在になっています。行き先をナビゲートしてくれるだけでなく、日常もナビゲートしてくれる頼れるサポーターなのです。
もしあなたが「聞こえにくさ」に少し悩んでいたり、もっと安全に、もっと純粋に今を楽しみたいと願っているなら、この小さな頼れるサポーター、Apple Watchの触覚フィードバックをぜひ試してみて欲しいなと思います。Apple Watchが手首に伝える優しい振動は、今日よりも少しだけ明るく軽やかな明日へとナビゲートしてくれるはず。私の「できる」世界が広がったように、あなたの世界が広がるきっかけになりますように。
