コロッケ幸福論。なぜ私はこんなにもコロッケに惹かれるのか

油?衣?ジャガイモ?それとも食感?美味しく感じる理由を探る

揚げたてのコロッケ。あつあつを頬張った瞬間、口いっぱいに広がるのは、まぎれもない幸福です。私にとってそれは決して大げさな話ではなく、実際、週に一度のペースで食べているかもしれない、黄金色の衣をまとった小判形のコロッケ。「今日のご飯はこれだけでいい」なんて思ってしまうほどの満足感。でも、ふと冷静になって考えてみたんです。どうして私はこんなにもコロッケに心惹かれてしまうのか。

夕暮れ時、商店街やマーケットを歩いていると、ふと鼻をくすぐる香ばしさとラードの甘い香り。お肉屋さんの前で足を止め、気がつけば茶色い紙袋を手に持っている。そんな私の姿をよく目にする家族に、ある日こう訊かれたのです。

「なぜそんなにコロッケが好きなの?」

コロッケを愛してやまないコロッケ好きの私からすると、好きな理由?「美味しいから」それがすべてだと。

「なぜそんなに美味しく感じるんだろうね?」

コロッケの美味しさ、その魅力を語り出せばキリがありません。「衣を油で揚げたら甘くて香ばしくてマッシュされたポテトがしっとりしてて・・・」あれ?説明しようとすればするほど、コロッケである理由がぼやけてきました。

「それなら、コロッケじゃなくてもいいんじゃない?」

でもそうと言われると、「それは違う」とキッパリ答えたい。

世界中に美味しいものは溢れていますし、揚げ物やジャガイモ料理だって数え切れないほどあります。それなのに、なぜ「コロッケ」でなければならないのか。今回は、私の個人的な偏愛と少しばかりの分析を交えて、コロッケが愛おしく感じる理由を紐解いてみたいと思います。

「揚げ物だから」という理由だけでは説明がつかない

まず思い浮かぶのは、「油で揚げているから美味しいのでは?」という仮説。たしかに、揚げ物には抗えない魅力があります。カロリーなんて言葉を忘れてしまうほど、香ばしくて、食欲をそそる存在です。

でも、唐揚げや天ぷらも同じ揚げ物。もし「油の力」だけが理由なら、それらでも十分満たされるはず。でも私が求めているのは、唐揚げのジューシーさでも、天ぷらの軽やかさでもない。もっとやさしくて、懐かしい味わい。

唐揚げが「元気が出るご馳走」なら、コロッケは「日常に寄り添うおかず」。揚げ物という共通点だけでは、あの魅力は語りきれない気がするのです。

油は油でも「ラードの脂」かなという考えも浮かびましたが、お肉屋さんのラードで揚げたコロッケだけでなく、普通にお惣菜コーナーにある植物油で揚げたコロッケも好きなので、これも当てはまりそうにありません。

衣のサクサク感ならトンカツにもあるけれど

次に考えたのが「衣」の存在です。パン粉をまとって黄金色に輝く姿は、見ただけでお腹が鳴りそうです。サクッとした歯触りは、食べる行為そのものを楽しくさせてくれます。

けれど、衣のサクサク感といえばトンカツやエビフライだって負けていません。厚切りの豚肉を噛みしめるトンカツの迫力も魅力的。でも、コロッケにはあのドンとした「構え」がない。もっと気軽で、おやつにもなればおかずにもなる、ふとしたときに食べたくなる存在。

衣の中身が、しっかりとしたお肉や海老ではなく、しっとりした柔らかいマッシュポテトだからこそ、あの軽やかさが引き立つ。どうやら、あの中身とのバランスに秘密がありそうです。

ジャガイモ料理は星の数ほどあるのに

では、ジャガイモが主役だからなのでしょうか。じゃがバター、フライドポテト、ポテトサラダ、ポテトポタージュ、ジャーマンポテト、ハッセルバックポテト。ジャガイモはどんな形になっても美味しい。私もジャガイモ料理が好きなので、ポテトレシピもこのブログでいくつかご紹介してきました。でも、コロッケの「食べたくなる頻度」は段違い。

コロッケは、ジャガイモを一度茹でて、あるいは蒸して柔らかく潰し、それをまた成形して衣をつけて揚げる。家庭で作ろうとすると、意外と工程が多くて大変なんですよね。

そんな手間ひまが生み出す、外側の「サクッ」と内側の「しっとり」という極端な食感のコントラスト。フライドポテトでは味わえない、ポテトサラダにはない温かさ。あの二面性が、私の心を掴んで離さないのでしょうか。けれど、「サクッとしっとり」の食感なら、カニクリームコロッケもあります。

油、衣、ジャガイモ。そのどれかではなく、私にとってこの三つの要素が三位一体となっているコロッケ。要するに、「衣をつけて、油で揚げた、ジャガイモ」に惹かれていることがはっきりしてきました。そこに「サクッとしっとり」が加わるならそれに越したことはないといった感じです。

体が喜ぶ「脂質」と「糖質」の組み合わせという化学反応

少し現実的な視点からも考えてみましょう。コロッケの主な成分を分解してみます。

・衣:小麦粉・パン粉=糖質(炭水化物)
・中身:ジャガイモ=糖質(炭水化物)
・揚げ油:脂質

コロッケはその構成要素のほとんどが、生きるエネルギー源となる「糖質」と「脂質」でできています。栄養バランスが取れている食品といえば卵を一番に思い浮かべることも多いですが、納豆や豆腐などの大豆製品、乳製品などのほかに、ジャガイモもそれに近いといわれています。もちろんどれも単体では不足する成分があると思いますが、コロッケの何かの成分を、私の体が必要としているのかも。

さらに、揚げ色がつく過程で起きる「メイラード反応」という化学反応。パン粉やジャガイモに含まれるアミノ酸と糖が加熱されて結びつき、あの香ばしい褐色と独特のうまみ成分を生み出します。あのきつね色は、美味しい証拠そのものなのです。

振り返ってみれば、コロッケの袋をそっと手に持つのは夕方の買い物時が多いです。お腹は空いているし、疲れてもいます。もしかしたら、体がエネルギーをチャージしたがっているサインなのかもしれません。「カロリーが…」なんて気にしつつも、本能レベルで頭が「これは生きるために必要な美味しさだ!」と信号を送っている。そう考えると、私がコロッケに抗えないのは、生物としてとても自然なことのように思えてきます。

たかがコロッケ、されどコロッケ

いろいろと仮説や考えを並べてきましたが、結局のところ、コロッケに惹かれる理由は、私の体が「脂質」と「糖質」の強力なタッグを本能的に求めているという理由に。いま必要としているものがバランスよく揃っている、それが私の場合はコロッケなのだと思い至りました。

でも、揚げたてを一口食べた瞬間の「はふはふ」という感覚の前では、どんな分析も野暮というものでしょう。

お店で買うサクサクも、家で作るちょっと爆発してしまったものでも、どれも愛おしい。これからも私は、スーパーやお肉屋さんの前を通るたびに、幸せな気持ちでコロッケを手に取るのだと思います。

みなさんにとって、コロッケはどんな味ですか? 今日の夕飯、久しぶりにコロッケにしてみるのもいいかもしれませんね。

そうそう、このあとに、もう一度家族に同じ質問をしてもらったんです。私の自信ありげな表情から何かを感じて訝しがっていましたが、私はどこ吹く風で答えます。

「なぜそんなにコロッケが好きなの?」

「私の本能がコロッケを呼んでいるから」

少し間が空いて返ってきた返事は「・・・なるほど」でした。少し呆れていますか?