
定番野菜の漬け時間や、漬ける食材の注意点を解説。ぬか床を美味しく育てる「隠し味」にも挑戦しました。
突然ですが、「よ」と言ってみてください。
それが、はじめて自分で漬けた「ぬか漬け」を食べた時の、私の口の形です。
手首でApple Watchが「そろそろぬか漬けを確認する時間だよ」と知らせてくれたのは、「熟成ぬか床」でならし運転を開始してから12時間が経過した頃。試しに漬けてみた白菜の芯と大根はどうなっているでしょうか。
微生物たちは私が寝ている間もせっせと働き、野菜を美味しく変化させてくれているはず。冷蔵庫からぬか床パックを取り出し、ジッパーを開け、野菜についたぬかをそっと落とし、小さく切って口に含む・・・
「濃い。」
塩辛いとは少し違う塩気の濃さ。思わず口が「よ」の形になりましたが、漬け始める前のぬか床を味見していたこともあって、想像通りといえば想像通りです。1回目のぬか漬けは塩気が強かったので、お茶漬けにして食べることにしました。程よい塩気と酸味がいいアクセントになって美味しくいただけました。
パッケージの説明書きに「漬けはじめは塩気や酸味を強く感じることがあります。漬け時間を短くするなど調整してください」とあったので、漬け時間を短くするなど調整しながら繰り返すこと4日目。だいぶ塩気が丸みを帯びて落ち着きました。水分補給係の白菜のおかげもあってか、ぬか同士もほどよくまとまって全体的にしっとりと馴染んでいます。
さて、ここからどんな野菜を漬けましょう?
漬ける野菜を選ぶ:美味しいもの、NGなもの
ぬか漬け作りが長い母など先人たちの声を聞くと、「基本的にはどんな野菜でも美味しくなるけど、向き不向きがある」とのこと。それさえ覚えておけば、自由に好きな野菜を楽しんでいいそうです。「熟成ぬか床」のパッケージに写っているのは人参、大根、きゅうり、なす、白菜(カブ?)。「ぬか漬けといえば」と思い浮かべる基本的な野菜たちですね。
⚪︎野菜ごとの漬け時間の目安(冷蔵庫の場合)
私が準備していた野菜の、漬け時間の目安は以下の通りです。
・きゅうり(8-10時間):ヘタを取って板ずりします(苦味が少なくなります)。
・白菜(12-18時間):軸に切り込みを入れ、葉の間に床を挟むようにして漬けます。
・人参:(12-18時間):皮を剥き、大きいものは縦に半割、小さいものは切り込みを入れます。
・大根(14-18時間):皮を剥いて容器に入る適当な大きさに半割りカットします。
まだぬか床の塩気が強めなこともあり、白菜は葉を包むように折り畳んで漬けました。普段の料理では野菜を皮ごと食べているので、大根や人参は皮を剥かずにそのまま漬けてみることに。「漬け時間は目安です。野菜の大きさ、種類によって調整してください」という説明書きを参考に、一番早く漬かるきゅうりの様子を見ながら調整しようと思います。
⚪︎基本的な野菜の漬け方
野菜の下準備はとてもシンプルです。
1. 野菜を綺麗に洗い、適当な大きさに切ります。
2. 野菜が完全にぬか床に隠れるように埋め込みます。
3. 袋の入り口についたぬかを拭き取り、空気をしっかり抜いて冷蔵庫へ。
4. 漬かった野菜を取り出し、さっと水洗いしてカットします。
ちなみに、私は1回目から「ぬかを洗い流すのはなんだか忍びない」と感じてしまい、手でしっかり落とすだけに留めて、そのまま切っていただいています。
⚪︎不向き・注意が必要な食材
なんでも漬けられるとはいえ、気をつけたい食材もあります。
・水分が多すぎるもの:水分が増えすぎると腐敗菌の増殖やカビの原因になることがあります。
・香りが強すぎるもの:ぬか床全体に強い匂いが移ってしまいます。
・殺菌作用が強すぎるもの:ぬか床を育てる乳酸菌や酵母菌まで弱らせてしまい、発酵が進まなくなる可能性があります。
殺菌作用のある唐辛子ですが、適量なら防腐剤代わりになり、ピリッとしたアクセントにもなります。私の購入した「熟成ぬか床」には最初から入っていたので、そのまま様子を見ることにしました。
水分が多いものや匂い移りが少し心配な食材は、別の小さな容器やジッパー袋にぬかを分けて、そこで漬けてみるのがよいそうです。
⚪︎入れてはいけないNG食材
生肉や生魚は、雑菌が増えやすく腐敗の大きな原因になるため、ぬか床に直接入れるのはNGです。これらを漬けてみたい場合は、野菜と同様に別の容器に取り分けたぬか(使い捨て用)で行いましょう。
以前に、北陸のお土産で「こんかいわし」という、鰯(イワシ)のぬか漬けを頂いたことがありました。日本のアンチョビと呼ばれることもあって、強い塩気が特徴。ぬかを付けたまま軽く炙って食べたのですが、とても美味しかったです。ご飯やお酒が進みすぎて少し困りました。これは、新鮮なイワシを塩漬けしてから、米ぬかと唐辛子で漬け込むのだそう。いつか変わり種として挑戦してみるのも面白そうです。
隠し味を試してみる
さて、ここからがぬか漬け作りの醍醐味、「隠し味」です。前回の記事でも触れましたが、ぬか床には様々な食材を加えることで風味を豊かにすることができます。
* 昆布: 余分な水分を吸い取りつつ、強烈なうま味をプラス。
* 唐辛子: 防腐作用があり、味を引き締めます。
* 干し椎茸: グアニル酸といううま味成分が豊富。奥深い味わいに。
* 実山椒: 爽やかな香りと防腐効果。上品な風味になります。
* ビール・粉からし: 発酵を促したり、カビを抑制したりする効果も。
「熟成ぬか床」のパッケージにも、「好みに合わせて、昆布、ニンニク、さけ、みかんの皮、山椒の実、きなこ、醤油などを加えてください」とありました。まずは定番中の定番、昆布を加えることにしました。ちょうど自宅に漬物用に小さく細切りにされた昆布があったので、ふたつまみほど投入。水分調整とうま味アップに期待です。
母直伝の隠し味も忘れずに
そして今回、どうしても試してみたかったのが、実家の母直伝の隠し味、りんごです。これは食べるために漬けるというよりも、ぬか床にふくよかな風味とまろやかさを加えるための隠し味として入れているそうです。
自宅には、フルーツスムージ用に常備している清々しい黄緑色のりんごがあります。スッキリとした甘味と酸味のバランスがお気に入りの品種です。きれいに洗ったりんごを4等分のくし切りし、そのひと切れを芯を取らずに半分にカットして、ぬか床に入れました。
ネットでほかの人の様子を覗いてみると、隠し味としてだけでなく「りんごのぬか漬け」として楽しんでいる方も多いようです。デザート感覚で食べると美味しいのだとか。私もぬか床の中で溶けて見えなくなってしまう前に、一度取り出して「りんごのぬか漬け」としても味わってみようと思います。
「私のぬか床」に育てる楽しみ
市販の「熟成ぬか床」からスタートした私のぬか漬け生活ですが、野菜を選び、隠し味を加えることで、少しずつ「私の味」に近づいているような気がします。
最初は塩辛かったぬか床も、野菜の水分や昆布のうま味、そしてりんごの風味が加わることで、日々変化しています。明日の朝、冷蔵庫を開けるのがまたまた楽しみになりました。
皆さんはどんな野菜、どんな隠し味でぬか漬けを楽しんでいますか?